ワーキングメモリと検索機能

1.アウトプットの弱さとワーキングメモリ

 

ワーキングメモリが弱いと検索機能も弱くなるといった内容が,自分の脳器質を良く表していると感じている。

 

これまで,ワーキングメモリが弱いと,情報が溢れてしまい,定型発達者が容易にできるように,話された情報を俯瞰的に見たコメントができないといった特性が表れると理解していた。

 

確かにこの点は正しい。

 

今回はそれ以外にも,ワーキングメモリの弱さの影響で,検索機能も弱くなるといった内容を考察してみたい。

 

自分は結構な読書家だが,読んだ本を引き出しとしてアウトプットすることができません。

すぐに忘れてしまって単に記憶が悪い人間とこれまで理解してきたが,人間の記憶というものはそう簡単に忘れるものではないとも考えており,自分の考えの中で矛盾点があった。

 

そこで,例えば長期記憶に記録されてはいるが,検索機能が弱いと長期記憶から検索して,必要な時に必要な情報をうまく引き出せないと考えると納得がいく。

 

発達障害傾向のある人は,自分のペースで物事を進める際には,多少の失敗はありますが,意外とうまく物事を処理できるのではないだろうか。私は自分のペースで物事に取り組んだ場合,ある程度の定型発達者を凌ぐ,処理能力,問題解決力があると自負している。

 

それがうまくできなくなるのは,周りに人がいてその人達のペースで進める時や,突然の変更に迫られて臨機応変な対応が求められる時だ。

 

その時には当然,自分のペースで物事を進めることができず,周りのペースで進めることが求められて,自分の能力が感覚的には30%以下に収縮してしまっているように感じる。

 

会議で頭の回転の早い定型発達者が内容をリードしている時に,ASD傾向のある人が内容についていくことに精一杯になり,自分の意見を考えられる状態ではない情景をイメージするとわかりやすい。また,大勢の人の前で突然のスピーチに指名されて,しどろみどろになり,貧弱なスピーチになるケースも容易に想像できる。

 

これは,社会で求めれるごくわずかな時間での検索機能の弱さを示しているのではないだろうか。

 

ワーキングメモリとは記憶してそれらを処理するだけではなく,長期記憶の検索機能までに影響があると考えると理解が進む。

 

確かにパソコンなどの検索機能では,①キーワードをスピード任せで探していく方法と,②キーワードだけの集合体を作成しておき,そのキーワードに紐付けて長期記憶から情報を引き出す方法がある。

 

定型発達者は,後者②のキーワードの集合体に紐付けて情報を引き出すのに対して,ASD傾向のある人は,前者①のスピード任せで情報を探し始めるのではないだろうか(当然スピードもたいして早くないので情報は求められる時間内でみつからないことが多い)。

 

このように考えると私のようなASD傾向のある人が,せっかく覚えた情報を自由で出し入れできず,記憶からの題材をもってきた会話が下手で,仕方なく周囲の情報からの話ばかりになり,深い話ができないといった点も理解できる。

 

その結果,ASD傾向のある人のコミュニケーションが苦手,人間関係を深めることが苦手という特性につながるのではないかと考えるとスッキリと整理できる。

 

2.一口メモ

 

さて,ワーキングメモリの弱さが検索機能の弱さにつながることがわかったが,この検索機能を鍛えるには何をすればよいのでしょうか。

 

わからない・・・・。

 

ただ,特性により我々ASD傾向のある種族は,脳に莫大なインプットがあるにもかかわらず,それを引き出すことができないことがはっきりした。

 

検索機能を強化できないまでも,キーワードであるアウトプットをより良いものにできないかと考えました。

 

そこでイケハヤさんが,インプットとアウトプットについて述べたメルマガが参考になります。

 

我々はインプットとアウトプットを分けて考えがちだが,インプット=アウトプットで,インプットとアウトプットに時間を分けずに一緒にするように心がけるべきだと。

 

インプットしながら,アウトプットする。

例えば,映画をみながら,琴線に触れた部分を写真でとり,メモを記入してアウトプットしておく。

聞いた情報をすぐに,スマホをつかってブログやメモに書き込みアウトプットする。

セミナーを聞きながら,琴線に触れた情報を自分の情報としてツイッターでアウトプットしておく。

誰かの話していたことを,自分の情報としてアウトプットする。などなど。

 

ポイントは何をアウトプットするかです。

千人いれば,感じ方も千差万別です。それぞれの違い,すなわち,それぞれの琴線に触れる部分が違うから個性というものが生まれるのです。その琴線を大切に感じ取り,アウトプットすることで,自分だけの旬な情報,意見ができあがるのです。これが,面白いのです。

よって,アウトプットは自分の感性を敏感にして,ビビットときた情報を切り取るようにして,それに感じたことを加えるのです。

この繰り返しによりアウトプットの質の向上が図られます。

 

もう1つ。検索能力の弱さの対策からかけ離れていくようですが,アウトプットの題材がないと嘆くなかれです。

 

アウトプットの題材,身の回りにも溢れていると。

 

以下,イケハヤさんのメルマガの抜粋です。

 

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「インプットの質」
ばかり追い求めていくと、世の中がつまらなく見えてきてしまいます。

「最近の映画はつまらない!」「昔の小説は面白かった!」みたいな老害になっていきます。

インプットの質はコントロールできません。だって、よそからやってくるものですから。

そこに固執するのではなく、まずは自分の「アウトプットの粒度」を高めるようにしましょう。

そうすれば、あらゆる情報が「質の高いインプット」に変わるんです。

多くの人は、順番を間違えています。

良質なインプットを求めるのではなく、己のアウトプット能力を高める。 すると、さまざまなものが、すばらしいインプットになる。 本来は、こういう順番になっています。 どういうことかというと、たとえば「はあちゅう」さんの文章を考えてみるとスッキリわかります。 彼女のnoteやエッセイを読んだことがある方はわかると思いますが、かなり「細かい」エピソードを題材にしているんですね。
はあちゅうさんは、ごくごく些細な情報(インプット)をすばらしいアウトプットに仕立て上げる料理人なわけですね。

そして、そういうトレーニングを続けていると、世界を観る解像度がどんどん高くなり「あらゆること」について語れるようになるのです。

実際、はあちゅうさんはどこかで「部屋のホコリ」について書いていたような気がします。

すごくないですか、これ。文字通りの「ゴミ」ですら良質なインプットに変え、同時にすばらしいアウトプットを生み出す。
魔法のような芸当です!
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いかがでしたか,要はアウトプットをどんどんしていくしかないといった見も蓋もない内容になってしまいましたが,ワーキングメモリや検索能力が低い我々ASD人の目指すべき道のヒントになればと思い紹介させて頂きました。

それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!