変圧器の異周波運転の解説[変圧器3]

定格周波数60Hzの変圧器を50Hzで使用する場合,以下の事項についてその影響を説明する。ただし,一次電圧は定格電圧に等しいものとする。

 

目次

  1. 変圧器の効率
  2. 電圧変動率
  3. 定格出力
  4. まとめ

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1.変圧器の効率

 

変圧器の効率μ[%]は,以下のように表される。

 

μ =(出力kW)/(出力kW+全損失kW)✕100

 

(1)無負荷時について

 

全損失のうち,無負荷時の鉄損は,ヒステリシス損Phとウズ電流損Peの和であり,電圧をV,周波数をfとすると,次の関係がある。

 

Ph∝V^2/f,  Pe∝V^2

 

電圧一定で,50Hzで使用すると,Phは60Hz時の6/5=1.2倍となるが,Peは変わらない。

 

一般にPhは鉄損の80%程度であるため,Ph:Pe=4:1となるから,鉄損は以下の通り増加する。

 

(4✕6/5+1)/(4+1)=1.16倍

 

(2)負荷時について

 

最大磁束密度をBmとすると,Bm∝V/f  であるから,6/5=1.2倍に増加する。

 

このため鉄心が飽和に近づき,励磁電流が大きく波形ひずみもおおきくなるため,巻線の抵抗損も増加する。

 

また浮遊負荷損は,周波数の2乗に比例するので (5/6)^2=0.694倍に減少するが,絶対量としてはわずかである。

 

以上のように,全体として損失が増加し効率は低下する。

 

2.電圧変動率

 

電圧変動率εは,%抵抗降下をp,%リアクタンス降下をq,負荷リキリツ角をθとすると,

 

ε=p cos θ + q sin θ  [%]  である。

 

ここでpは抵抗分であるため電源周波数が低下しても変化しないが,qはリアクタンス分であるため,5/6=0.833倍に減少する。

 

また,上式より力率1,すなわち cos θ =1のときは,sin θ =0となるため,電圧変動率は変化しないが,力率が悪化して(極端ではあるが),力率0となった場合,cos θ=0,sin θ=1となるため,電圧変動率は100−83.3=16.7%小さくなる。

 

ゆえに一般に電圧変動率は小さくなる。

 

3.定格出力

 

損失の増加により温度上昇は大きくなる。

 

この温度上昇を定格値以下に抑えるためには負荷電流を減少させねばならず,定格出力は減少する。

 

なお,最大磁束密度を大きく設計した変圧器は,ヒステリシス損,抵抗損とも大幅に増加するので,出力の低下は著しい。

 

4.まとめ

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定格周波数60Hzの変圧器を50Hzで使用する場合,変圧器の効率,電圧変動率,定格出力についてその影響を説明しました。

 

変圧器の効率は,無負荷時は鉄損が増加し,負荷時は巻線抵抗損が増加して,効率は低下する。

 

電圧変動率は,力率が極端に抵抗した場合は,リアクタンスの影響で16.7%小さくなる。

 

定格出力は,損失増加による温度上昇を抑えるため,負荷電流を減少させなければならず,定格出力は減少する。

 

それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!

 

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