原子力発電所の核分裂反応を解説[原子力発電所6]

 

原子力発電における軽水炉の核分裂反応の仕組み,軽水炉に濃縮ウランを用いる理由を説明する。

 

目次

  1. 軽水炉の核分裂反応の仕組み
  2. 軽水炉に濃縮ウランを用いる理由
  3. まとめ

1.軽水炉の核分裂反応の仕組み

 

質量数が233および235のウラン(233Uおよび235U)や質量数が239および241のプルトニウム(239Puおよび241Pu)などの原子核が中性子を吸収すると,それらの原子核が分裂してさまざまな原子核が生ずる。これを核分裂と言う。

 

原子力発電所で用いられるものは主として235Uの核分裂反応であり,その反応は次の通りである。

 

ここに,AおよびBは新しい原子核で,核分裂生成物と呼ばれるものである。

 

分裂のしかたによって様々な核分裂生成物が発生する。

 

また,v10nは核分裂によって放出される中性子で,通常2個または3個放出され,vはその平均値である。

 

さらに核分裂により,原子核の質量の一部が消失したエネルギーに変換され,発生するエネルギーは235U1個の核分裂当たり約200MeVである。

 

ところで上述のような核分裂反応が単発的でなく継続して発生して初めて原子力発電所のエネルギー源となるわけであるが,核分裂によって生じる中性子は高エネルギーの高速中性子であるため,235Uのような核分裂性物質が吸収しにくい。

 

そこでこの高速中性子を減速して核分裂性物質が吸収しやすいエネルギーレベルの熱中性子にすることが必要であり,これに用いられるものを減速材と呼んでいる。

 

減速材としては,1回の衝突当たりの中性子エネルギー損失の大きい原子核,すなわち質量数の小さい原子核がよく,軽水(H2O),重水,黒鉛などが用いられ,原子炉は減速材の種類によって軽水炉,重水炉,黒鉛炉などと呼ばれている。

 

2.軽水炉に濃縮ウランを用いる理由

 

 原子炉は,燃料・減速材および冷却材の組み合せによって多くの形式が考えられるが,これらを自由に組み合わせることはできず,原子炉として成立するためには以下の条件が必要である。

 

(1)適切な中性子増倍率をもつこと

(2)各構成材料間の化学反応のないこと

(3)動力炉の場合,経済性の良いこと

 

軽水炉では一般に減速材と冷却材の両方に軽水(H2O)が用いられているが,軽水は相対的に無駄な中性子吸収が多く,天然ウランのままでは核燃料にしても所要の反応度を得ることができない。

 

このため軽水炉では235Uの割合を天然の0.7%から約3%まで高めた濃縮ウランを核燃料として使用している。

 

3.まとめ

 

原子力発電における軽水炉の核分裂反応の仕組み,軽水炉に濃縮ウランを用いる理由について説明しました。

 

軽水炉の核分裂反応の仕組みとして,ウランの核分裂反応,高速中性子を熱中性子に減速させる減速材の役割について説明しました。

 

また,軽水炉に濃縮ウランを用いる理由について,天然ウランのままでは核燃料にしても所要の反応度を得ることができないことから,軽水炉では235Uの割合を天然の0.7%から約3%まで高めた濃縮ウランを核燃料として使用していることを述べました。

 

それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!