自家用高圧受電設備の事故波及対策を解説[施設管理40]

自家用高圧受電設備(高圧引込線を含む)の事故により,供給変電所の配電線が停電する波及事故がある。

この波及事故を防止するために自家用高圧受電設備で一般的に考慮しなければならない主な措置について説明する。

 

目次

  1. 設計上考慮すべき事項
  2. 工事施工上考慮すべき事項
  3. 保安上考慮すべき事項
  4. まとめ

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1.設計上考慮すべき事項

 

(1)機器類の絶縁強度等を完全にする。変圧器,開閉器,変成器,ケーブルなど機器・機械類は,受電設備指針による規格品を採用する。

 

充電部の相互間および大地間の絶縁距離を十分にとる,また,受電用遮断器より電源側のVCTやZCTはモールド化したものを用いる,などにより,設備の信頼度を高くする。

 

(2)屋外設置のキュービクル等は,風雨,塩じんなど自然環境に十分耐えるものとする。

 

(3)引込口あるいはその近くに適切な避雷器を設置する。

 

また架空引込線については,架空地線を設置することが望ましい。

 

(4)保安責任分界点に,地絡保護装置つき高圧負荷開閉器(GR付PAS)を設ける。

 

(5)供給変電所保護装置との保護協調をとる。

 

自家用受電設備の内部事故時に,供給変電所の保護,開閉装置が先行して動作するなど不都合がないように,自家用受電設備の保護装置の動作電流,動作時間を選定する。

 

例えばGR付PASの場合には,

 

①過電流保護については,供給変電所のCB動作後,パスが開放し,再閉路の際,投入されないようロックする。

 

②地絡保護については,供給変電所のCBが動作する以前にパスが動作,開放する。

 

(6)自家用受電設備内の各種保護装置間の保護協調をとる。

 

(7)受電設備は,人,動物の感電防止のため,受電部が直接露出しない構造とする。

 

2.工事施工上考慮すべき事項

 

(1)高圧ケーブルは,被覆を損傷しないよう,また,曲がりを十分とって布設する。

 

地中ケーブルの場合は,所定の深さに埋設し,布設箇所の表示をする。

 

ケーブルの端末処理は熟練した技能者に行わせる。

 

(2)ケーブルのシールドを片端接地にするなどの配慮をして,零相変流器の作用および継電器の動作を確実にする。

 

(3)建屋およびキュービクルに小動物が侵入しないよう,各種の開口部を網などで確実にふさぐような構造とする。

 

また柱上の受電設備の場合は,柱や支線に忍び返しを取付けるなどして,小動物による被害を防ぐ。

 

(4)機器,材料が仕様どおりであるか,また,据付,接続などの施工が確実であるかをチェックする。

 

(5)各種の測定,試験を確実に行う。

 

(6)保護装置を適切に整定する。

 

3.保安上考慮すべき事項

 

(1)設備の運転中は,各部の温度上昇,異音,変色などに注意する。

 

(2)機器,ケーブルなどの点検,劣化診断を定期的に行う。

 

(3)   保護装置の動作試験を定期的に行う。

 

(4)強風,豪雨,地震などがあったときは,浸水,冠水その他の異常がないかどうかを調べる。

 

(5)ケーブル布設箇所付近の地面の掘削工事があるときは,工事に立会,ケーブルの損傷を防止する。

 

(6)必要に応じて,次のような設備の改善を行う。

 

①保安責任分界点に地絡遮断装置がない場合は,地絡遮断装置付き高圧交流負荷開閉器を設ける。

 

②プチルゴム電力ケーブルは,なるべく早く架橋ポリエチレンケーブル(CV,CVTケーブルなど)に取り替える。

 

③零相変流器の貫通電線がカンブリック電線の場合は,架橋ポリエチレン絶縁か,エチレンプロピレン絶縁のものに取り替える。

 

④変成器がモールド形でない場合は,モールド形に取り替える。

 

また,電圧変成器の一次側に,十分な遮断性能を持つ高圧限流ヒューズを取付ける。

 

4.まとめ

 ☆これまでになかった新電験論説攻略法の紹介☆

 

自家用高圧受電設備(高圧引込線を含む)の事故により,供給変電所の配電線が停電する波及事故があり,この波及事故を防止するために自家用高圧受電設備において,一般的に考慮しなければならない主な措置について説明しました。

 

設計上考慮すべき事項,工事施工上考慮すべき事項,保安上考慮すべき事項に分けて,整理してください。

 

それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!