高圧受電設備の事故による波及事故の原因を解説[施設管理39]

キュービクル式高圧受電設備(高圧引込線を含む)の事故により,供給側の配電線が停電する波及事故があるが,その主な原因をあげ,その防止対策について説明する。

 

目次

  1. 主な事故原因
  2. 事故防止の対策
  3. まとめ

☆これまでになかった新電験論説攻略法の紹介☆

1.主な事故原因

 

(1)キュービクル式に特有なもの

 

①ねずみなど小動物によるもの

 

ケーブルの引込口,引出口あるいは通気孔などからねずみ,蛇などの小動物が侵入し,諸機器の露出充電部に接触し,地絡,短絡事故となる。

 

②雨水などによる吸湿

 

通気孔やキュービクル扉の隙間その他から,雨水,雪などが浸入し,絶縁物表面が湿潤して絶縁が劣化し地絡事故となる。

 

台風時など特に湿度が高い空気により,絶縁物表面に結露したときも同様の結果となる。

 

(2)やや一般的なもの

 

①雷害

 

この種の設備では避雷器を設置していないものが多い。

 

このため襲雷により,ケーブル端末や計器用変成器など機器の絶縁が破壊され,地絡,短絡事故となる。

 

②自然劣化

 

機器の設置環境が悪い場合,自然劣化を早めることがある。

 

③施工不完全

 

特に引込高圧ケーブルの端末処理が不完全な場合,絶縁劣化を早めて地絡,短絡事故となる。

 

④保守不完全,人為的ミスなど

 

保守,点検が不完全なとき,上記のような原因が重なって事故となる。

 

また諸工事に伴う掘削により地中ケーブルを損傷したり,操作ミスなどにより事故になることもある。

 

(3)保護協調不良による事故波及

 

保護リレーの整定不良などにより,供給側との保護協調が悪いと,配電線の供給側引出口で停電する波及事故になることがある。

 

2.事故防止の対策

 

(1)事故発生の防止

 

①小動物対策

 

通気孔は小動物が侵入しないよう,金網などで厳重にふさぐ,他の侵入口は,モルタルなどで封鎖する。

 

キュービクル内機器には,小動物の感電で事故に発展しないよう,充電部をテープなどで絶縁し,あるいはモールド形を用いたり,囲いを設けたりする。

 

②吸湿対策

 

通気孔に雨水などの浸入を防ぐフィルタなどを設ける。

 

機器に吸湿に対して強いモールド形機器などを用いる。

 

台風時などの結露に対しては,乾燥あるいは結露を防ぐためヒータや除湿器を用いると効果がある。

 

③雷害対策

 

避雷器を設置する。容量500kW未満の設備では引込口避雷器を省略できるが,雷害が発生する地域では避雷器を取り付ける。

 

④設置場所の選定

 

吸湿や自然劣化を助長しないよう,風当たり,塩じん害,浸水などの災害,高温,多湿など,設置環境について検討し,設置場所を選定する。

 

⑤その他

 

施工時の工事管理の徹底によって施工不完全を防ぐ,保守,点検を確実に実施して設備が良い状態に保つようにする。

 

掘削による地中ケーブルの損傷,操作ミスなど人為的なミスがないよう,物的,人的な安全対策を講じる。

 

(2)保護協調を図る

 

地絡,短絡保護装置の動作値および動作時間について,供給側と十分協議し,供給側が先に動作して停電範囲を拡大することがないように保護協調を図る。

 

また,責任分界点から受電用変圧器の間の事故(主として地絡事故)は受電用遮断器では遮断できないので,波及事故になる。

 

この波及事故を防ぐためには,責任分界点の近くに地絡保護装置つき高圧負荷開閉器を設置するのが有効である。

 

3.まとめ

 キュービクル式高圧受電設備(高圧引込線を含む)の事故により,供給側の配電線が停電する波及事故がある。

 

その主な原因をあげ,その防止対策について説明しました。

 

それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!

 

☆これまでになかった新電験論説攻略法の紹介☆