誘電正接測定試験を解説[施設管理36]

電力設備を維持管理するために行う試験として誘電正接試験があるが,この試験方法の概要を説明する。

また,誘電正接測定装置の種類を2つあげ,それぞれの特徴を説明する。

 

目次

  1. 試験方法の概要
  2. 誘電正接測定装置の種類と特徴
  3. まとめ

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1.試験方法の概要

 

(1)試験の目的

 

変圧器,回転機などの電力機器および,電力ケーブル,ブッシングなどの機械,設備の絶縁物の劣化の状態を把握して,保守に役立つ情報を得ることを目的とする。

 

(2)試験方法の原理

 

絶縁物に交流電圧Vを印加すると,ほぼ90°進んだ充電電流が流れるが,絶縁物に損失があるため,以下の画像のように90°進んだIcより小さな角度δだけ遅れた電流Iが流れる。

 

このときの損失電力Wは,W≒ωCV^2tanδ   であって,損失はtanδに比例する。

 

電力機器,設備の絶縁物は,吸湿,汚損,熱劣化あるいはボイドの発生などによって劣化するが,一般に劣化が進むに従って損失が増加するので,tanδの測定によって,劣化の程度を知る手掛かりになる。

 

このtanδを誘電正接といい,誘電正接測定試験はこのtanδ を測定する試験である。

 

(3)測定方法

 

測定方法には絶縁物の静電容量Cと損失に相当する等価抵抗Rを求め,tanδ=1/ωCR から計算する方法と,測定器により直接 tanδ を求める方法がある。

 

2.誘電正接測定装置の種類と特徴

 

大きく分けるとブリッジ(シェーリングブリッジ,簡易シェーリングブリッジ,逆シェーリングブリッジ)と tanδ計になる。

 

(1)シェーリングブリッジなどのブリッジ

 

①シェーリングブリッジは以下の画像のようなブリッジで,これによりCx,Rxを測定し,

 

tanδ=1/ωCxRx  によって tanδ を求める。

 

②シェーリングブリッジは他の方法に比較して,測定の精度が高い。

 

③逆シェーリングブリッジは,測定対象機器のケースなどを接地した状態で測定できるので,現地試験にも使用できる。

 

④簡易シェーリングブリッジは,運搬が容易で直読式であるので,取り扱いが便利である。

 

(2) tanδ計

 

①tanδ計は原理的には電流力計形力率計と同じもので,以下の画像のような結線で用いられる。

 

②ブリッジより精度が低く,電流が小さいときは測定が困難なことがある。

 

③運搬に便利であり,直読式で取り扱いが簡単である。

 

④現地試験に適する。

 

3.まとめ

 

電力設備を維持管理するために行う試験として誘電正接試験があり,この試験方法の概要を説明しました。また,誘電正接測定装置の種類を2つあげ,それぞれの特徴についても説明しました。

 

それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう

 

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