周波数調整を行うためには,当然,発電所の出力調整を必要とする。
この出力調整源として,以前は大容量貯水池をもつ水力発電所があてられていたが,汽力発電所の大容量化に伴い,調整発電所の容量は系統容量の数%ないし10%程度が必要とされていることから,水力のみに調整力をもたせることは困難になっている。
したがって,水力発電所と汽力発電所とが調整力を分担することが必要である。
水力発電所による場合でも,汽力発電所による場合でも制御用の発電所としては,負荷の制御能力が十分であることが第一に具備すべき条件である。
制御性能について考えると次の2つがあげられる。
①制御発電所の応答速度
これは制御発電所がどのくらいの負荷変化速度にまで追随できるかを示す値である。
これは速いほどよいことはもちろんであるが,過度に速い場合はハンチングや原動機の種類によっては問題がある。
②制御発電所の調整容量
これは制御発電所の出力が何MWくらい変動しても差し支えないのかを示す値である。
もちろん,この調整容量は負荷の変化速度に関係するわけで,ごくゆっくりした変化であるなら発電所の最低出力から最大出力までの間を変化しうるわけであるが,このような変化では周波数制御用としては問題外であって,機器に異常を与えないように,しかもその調整幅が適当に大きいことが必要である。
水力発電所と汽力発電所について備えるべき条件を述べると次のような点である。
1.水力発電所
(1)負荷変化に即応し出力を制御し得ること。
(2) 必要とする調整能力(kW)および調整電力量(kWh)も十分あること。
(3)出力変動によって機器設備に与える影響が少ないこと。
(4)調整により他発電所への影響が小さいこと。
(5)送電系統上あるいは水利上の支障が少ないこと。
このような点から,AFC発電所として対策となるのは,調整値容量の大きい調整値式発電所と貯水池式発電所である。
しかし他の水力発電所に比べ単位容量が小さいので,制御の質を向上するためにはどうしても数カ所以上の調整発電所を用意する必要がある。
この場合,同一水系からは2箇所以上選ばないほうが良い。
また負荷中心と水力電源が一般に相当離れているため,調整発電所は1つの送電系統に集中せず分散しておくのが有利である。
2.汽力発電所
(1)十分な出力変化幅と出力変化速度をもつこと(調整容量と追従性)。
(2)出力変化範囲で高効率運転が行えること(部分負荷運転が可能なものとする)。
(3)発電所の出力変動によって各種の設備に与える影響が少ないこと(応力の問題)。
(4)調整による他発電所への影響が少ないこと。
(5)系統運用上,支障がないこと。
(6)修理点検などによる停止時間が短いこと。
(7)始動時間が短いこと。
特に汽力発電所は水力発電所と違って熱応力の問題がある。
出力変化によってタービン内部の蒸気温度が急激に変化すると,タービン各部に温度のひずみを生じ,熱膨張の程度が部位によって異なり,大きな応力が生じるので,瞬間的な出力変化幅はある一定値以内に収めなければならない。
また発電所の出力変化によってボイラ内部の蒸気圧力が変化するが,蒸気圧力の降下がはなはだしくなるとボイラ降水管内部に気泡を生じ循環障害を起こすことがある。
したがってこのような障害の少ない発電所であることが必要である。
このためには重油専焼発電所のほうが石炭専焼の場合より同一負荷変化速度に対する変化幅が広く,負荷に対する応答も速いため有利である。
しかも貫流ボイラのように,ボイラ水の循環が自然でないもののほうが有利である。
すなわち重油専焼,貫流または強制循環ボイラをもち,変化幅を大きくとれる汽力発電所が有利ということになる。
3.まとめ
電力系統の運用における自動周波数調整装置による周波数調整にあてられる発電所の具備すべき条件を説明しました。
具備すべき条件として,制御発電所の応答速度,制御発電所の調整容量があげられる。
出力変動によって機器設備に与える影響が少ないことが重要である。
それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!
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