発電機の並列方式を解説[施設管理19]

 

発電機を電力系統に並列する場合,強制並列方式の得失を同期並列方式と比較して説明する。

 

目次

  1. 強制並列方式の長所
  2. 強制並列方式の短所
  3. まとめ

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1.強制並列方式の長所

  

(1)並列用装置が簡単である。

 

同期並列方式では,系統の条件に周波数,電圧,位相を合わせるための並列用装置が必要であるが(特に自動同期並列装置など)。

 

これに対して強制並列方式では,発電機の回転速度の検出と遮断器投入後の励磁の確立を図る装置は必要であるが全体として並列用装置は簡略化される。

 

(2)並列が迅速にできる

 

強制並列方式は,無励磁状態で発電機を運転し,規定回転数近くで並列用遮断器を投入し,直ちに励磁を加えることにより,発電機は同期化力によって,自ら同期運転に入ることとなる。

 

同期並列方式では,発電機を規定回転数にした後,励磁を加えて電圧を発生させ,系統の電圧とほぼ合致させた後,同期検定装置により,その位相を一致させるよう調速機の調整を行い,遮断器の投入時間を考慮して並列用遮断器の導入を行う。

 

したがって,同期並列方式では並列までの制御に時間を要することとなる。

 

この点,強制並列方式では発電機の周波数を系統周波数に完全に合致させる必要はなく,はじめ非同期で運転し,励磁を加えることにより同期化させる方式であるから,並列操作は迅速に行える。

 

(3)系統動揺時にも発電機を並列することができる。

 

系統電圧の大きさや周波数が動揺している場合は,系統に発電機を同期並列することはほとんど不可能であるが,強制並列方式では系統動揺時にも並列可能である。

 

(4)水車アクチュエータを省略できるので設備が簡素になる。

 

2.強制並列方式の短所

 

(1)遮断器投入時に発電機に多大な突入電流が流れる。

 

遮断器投入時には,発電機の電圧,位相,周波数が系統と一致しないので,発電機定格電流の数倍に相当する突入電流が生じ,その電磁機械力により発電機の電機子コイル,あるいは変圧器コイルに大きなストレスをかけることになるから,これの繰り返しは,絶縁劣化を促進する恐れがある。

 

同期並列方式では,周波数,電圧をほぼ系統のそれに合わせ,位相の一致したときに遮断器を投入するよう考慮されるから投入時の突入電流は,ほとんど生じないものと考えて良い。

 

(2)遮断器投入時の突入電流による系統の電圧降下が生じる。

 

これは系統容量と発電機容量との関係で大きさが異なる。

 

大容量系統に比較的小容量の発電機を強制並列する場合は,あまり問題とはならないが,系統構成あるいは需要形成などから電圧降下が悪影響をもたらす場合がある。

 

(3)大容量の発電機には適用されない。

 

系統容量に比べて発電機容量が大きい場合は系統の動揺が非常に大きくなり同期運転を維持することが困難になる。

 

(4)系統力率を悪化させる。

 

並列後,発電機の誘起電圧が確立するまでの間,相当量の無効電力を系統からとるので系統力率を悪化させる。

 

3.まとめ

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発電機を電力系統に並列する場合,強制並列方式の得失を同期並列方式と比較して説明しました。

 

強制並列方式の長所としては,並列用装置が簡単,並列が迅速にできる,系統動揺時にも発電機を並列できる,水車アクチュエータを省略できるので設備が簡素になる,などがあげられる。

 

一方,強制並列方式の短所としては,遮断器投入時に発電機に多大な突入電流が流れる,遮断器投入時の突入電流による系統の電圧降下が生じる,大容量の発電機には適用しずらい,系統力率を悪化させるなどがあげられる。

 

それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!

 

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