水車発電機の速度変動率を解説[発電機4]

 

水力発電所を新設する際,水車発電機の速度変動率を大きくとる場合の利害得失を説明する。

 

目次

  1. 速度変動率を大きくとる場合の利点
  2. 速度変動率を大きくとる場合の欠点
  3. まとめ

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水力発電所を新設する際,設備設計面から考慮しなければならないことは,以下の通り。

 

・導水路,水圧鉄管,水車,発電機,補機などの安全性,保守性,経済性の検討

 

・系統に対する当該発電所の位置付け

 

このうち,設計思想として速度変動率を大きく設定することは,負荷遮断時のガイドベーン閉鎖時間を長くすることができること,また,はずみ車効果(GD2)を小さくすることが可能となることから,水圧変動率は結果として小さめな値になる。

 

1.速度変動率を大きくとる場合の利点

  

(1)負荷遮断時の水撃作用による水圧上昇の影響を受ける水圧鉄管,入口弁,水車ケーシングの設計水圧を低くすることができ,これによる各部設計肉厚の減少が可能となる。

 

※管内の速度が変化すると,速度エネルギーが圧力エネルギーに変わるので水圧変動が生じる。開閉が急だとウォーターハンマー現象が生じる(水撃作用)。

 

(2)発電機については,速度変動率を大きくできるため,水車側から要求されるGD2を考慮する必要がないとすれば,発電機設計は固有GD2を採用できるため,軽量,コンパクト化が可能となる。

 

(3)ガイドベーン閉鎖時間を長くできるため,調速機容量または,電動サーボ容量を小さくすることが可能となる。

 

(4)上記から,回転体などが,軽量,コンパクト化できることなどによる,クレーンの小型化が可能となる。また,クレーンの小型化に伴い建物も安価とすることが可能となる。

 

2.速度変動率を大きくとる場合の欠点

 

上記の利点の反面,回転上昇の増大,GD2の減による速度変化の増大などにより以下の弊害が考えられる。

 

(1)採用GD2を小さくする場合

 

①単独運転:一般に中小容量機では,GD2が小さく単独運転時は周波数変動値が大きくなる。

 

したがって固有GD2を採用した場合には,さらに周波数変動値が大となり単独運転には不向きとなる。

 

②調速機の安定性:大容量系統に並列運転している場合は問題ないが,特に管路の時定数が大きい発電所において単独運転を行うと,速度制御上,不安定な現象を生じやすい。

 

この場合,GD2を小さくすると,さらに制御が難しくなる。

 

③また,過渡リアクタンスが大きくなる傾向があり,系統の過渡安定度に悪影響を与える。

 

(2)所内負荷対策

 

発電機母線に所内電源が接続されている場合は,遠端遮断時に補機電源の電圧,周波数上昇が大きくなる場合があるため,所内電源の切換などが必要となる。

 

(3)発電機回転子

 

負荷遮断回数が多い発電所において,発電機回転部の強度に疲労強度を考慮した設計が必要となる場合も考えられる。

 

3.まとめ

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水力発電所を新設する際,水車発電機の速度変動率を大きくとる場合の利害得失を説明しました。

 

 速度変動率を大きくとる場合の利点として,負荷遮断時の水撃作用が小さくなり各部分の設計水圧を低くして肉厚の減少が可能,水車側から要求されるGD2を考慮する必要がなく,発電機設計は固有GD2を採用でき,軽量,コンパクト化が可能,ガイドベーン閉鎖時間を長くでき,調速機容量や電動サーボ容量を小さくすることが可能,クレーンの小型化が可能で建物も安価とすることが可能な点があげられる。

 

速度変動率を大きくとる場合の欠点として,回転上昇の増大,GD2の減による速度変化の増大などにより,中小容量機では,GD2が小さく単独運転時は周波数変動値が大きくなる点,管路の時定数が大きい発電所において単独運転を行うと,速度制御上,不安定な現象を生じやすい点,過度リアクタンスが大きくなる傾向があり,系統の過渡安定度に悪影響を与える点があげられる。

 

また,発電機母線に所内電源が接続されている場合は,遠端遮断時に補機電源の電圧,周波数上昇が大きくなる場合があり,所内電源の切換などが必要となったり,負荷遮断回数が多い発電所において,発電機回転部の強度に疲労強度を考慮した設計が必要となる点もあげられる。

 

それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!

 

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