原子炉の形式の解説[原子力発電所8]

 

我が国で運転されてきた発電用原子炉の形式をあげ,その概要を説明します。 

 

目次

  1. 軽水炉(LWR)
  2. ガス冷却炉
  3. 新型転換炉(ATR)
  4. まとめ

 

原子炉の形式は,冷却材・減速材の種類によって分類され,用いられているのは,軽水炉,ガス冷却炉,新型転換炉である。

 

1.軽水炉(LWR)

  

(1)加圧水形炉(PWR)

 

冷却材・減速材ともに普通の水(軽水)を使った原子炉である。

 

燃料には低濃縮ウランを用いている。

 

炉から取り出された高温の冷却水を蒸気発生器の一次側に導き,二次側に蒸気を発生させ,この蒸気でタービン発電機を回転させる。

 

(2)沸騰水形炉(BWR)

 

冷却水・減速材・燃料ともにPWRと同様である。

 

炉内で蒸気を発生させ,直接タービンに導いている。

 

炉内の水は再循環ポンプによって強制循環させている。

 

2.ガス冷却炉

 

我が国では日本原子力発電東海発電所の1基だけである。

 

東海発電所の炉は減速材として黒鉛を,冷却材として炭酸ガスを,燃料として天然ウランを用いている。

 

炉から発生する高温の炭酸ガスを蒸気発生器一次側に導き,二次側に蒸気を取り出しタービンを回転させる。

 

蒸気条件もよいので熱効率も高いが,黒鉛の中性子減速能力が小さいことから,大量の黒鉛を要して炉は大型になる。

 

炭酸ガス冷却型炉であるため原子炉や熱交換器などが大きな割には出力が小さく、軽水炉に比べて発電単価が割高なこと,また国内唯一の炉型であるため,保守費や燃料サイクルコストが割高である。1998年3月31日をもって営業運転を停止し,安全かつ合理的な解体技術を開発中である。

 

3.新型転換炉(ATR)

 

我が国では,ふげん1基が運転されていたが,2003年3月に運転を終了し,2008年2月には廃止措置計画が認可され,廃止措置が行われている。

 

減速材として重水,冷却材として軽水,燃料として微濃縮ウランと天然ウランにプルトニウムを混合したもの(MOX燃料)を用いる。

 

炉内で軽水を沸騰させ蒸気を作り,その蒸気でタービンを回転させる。

 

軽水炉との違いは減速材に重水を利用することで中性子吸収を少なくし,ウラン235からプルトニウム239への転換比を高めており,また,軽水炉の使用済み燃料から回収されたプルトニウムも燃料として利用できることである。

 

4.まとめ

  

我が国で運転されてきた発電用原子炉の形式として,軽水炉(LWR),ガス冷却炉,新型転換炉(ATR)の概要について説明しました。

 

具体的には,軽水炉形として,冷却材・減速材ともに普通の水(軽水),燃料には低濃縮ウランを使った加圧水形炉(PWR)と沸騰水形炉(BWR)を,ガス冷却炉として,減速材として黒鉛を,冷却材として炭酸ガスを,燃料として天然ウランを用いている日本原子力発電東海発電所を説明しました(1998年3月運転終了)。

 

また,新型転換炉(ATR)として,減速材として重水,冷却材として軽水,燃料として微濃縮ウランと天然ウランにプルトニウムを混合したもの(MOX燃料)を用いるふげんを説明しました(2003年3月運転終了)。

 

それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!