電力ケーブルの絶縁劣化の原因を解説[送電線11]

 電力ケーブル(ソリッドケーブル)の絶縁劣化の原因と診断技術について説明する。また,水トリーについて説明する。

 

目次

  1. 絶縁劣化の原因
  2. 絶縁劣化の診断技術
  3. 水トリー
  4. まとめ

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1.絶縁劣化の原因

  

(1)電気的劣化

 

製造途中で絶縁物に混入する異物やボイド,布設工事中に働くストレスによるクラック等に電界が集中してコロナ放電が発生して劣化を推進する。

 

(2)化学的劣化

 

架橋ポリエチレンケーブルでは,化学成分が絶縁体を透過して導体に至り,導体材料と反応して生成した化合物が絶縁体中にトリー状に進展して絶縁破壊に至る化学トリー現象が生じる。

 

(3)温度による劣化

 

ゴムプラスチックケーブルは高温にさらされると酸化による高分子の分解,結合の解離が発生して熱劣化する。

 

 

またビニルケーブルでは高温水や蒸気により可塑剤が抽出されて劣化する。

 

(4)吸水による劣化

 

絶縁体中の水分や絶縁体中を透過してきた水分のために,ゴムケーブルでは誘電正接の増加や絶縁抵抗の低下が見られる。

 

また架橋ポリエチレンケーブルでは,電界と温度との相乗作用によって樹枝状の水トリーと呼ばれる微細なチャネルが形成され絶縁破壊電圧が低下する。

 

(5)機械的劣化

 

布設時の無理な曲げやキンクによる絶縁の損傷,布設後の重量物の落下や振動,負荷電流の変化による伸縮などによりシースや絶縁物が損傷を受け,その部分から浸水や損傷部分に生ずるコロナにより劣化が進行する。

 

2.絶縁劣化の診断技術

 

(1)直流高圧法

 

ケーブルの導体・シース間に直流高電圧を印加し,漏れ電流,変位電流,吸収電流を測定して診断する(以下の画像参照)。

 

比較的測定が容易で,現場で広く利用されている。

 

(2)部分放電測定法

 

ケーブルに高電圧を印加すると,ボイドやクラックなどで部分放電(コロナ放電)が発生する。

 

この時,印加電圧にわずかな変化が生じるので,この電圧の変化の大きさ,回数および部分放電が発生し始める印加電圧から診断する。

 

印加する電圧には交流と直流があるが,交流の場合は装置が大型になるので工場試験に適している。

 

また直流の場合は装置が小型で,漏れ電流も測定可能であるから現場試験に適している。

 

しかし,全般的な吸湿劣化の測定には適用できない。

 

(3)誘電正接測定法

 

ケーブルに商用周波交流電圧を印加し,誘電正接の温度特性,電圧特性などを測定して絶縁の状態を判定する方法で広くケーブルの工場試験に利用されており,絶縁物の平均的な劣化の検出に適している。

 

測定には高圧シェーリングブリッジ,簡易シェーリングブリッジ,tan δ計などが用いられる。

 

(4)絶縁抵抗計による方法

 

直流電圧をケーブルに印加し,その時の漏れ電流から絶縁抵抗を測定する。

 

低圧ケーブルには有効であるが,,高圧ケーブルに対しては大体の目安を知る程度で,局部的な劣化や微小な劣化の検出は困難である。

 

3.水トリー

 

CVケーブルの絶縁体中に侵入した水と異物やボイド,突起などに加わる局部的な高電圧との相乗作用により発生する樹枝状に成長していく白濁部を水トリーと呼ぶ。

 

水トリーが発生進展することによりケーブルの絶縁劣化が著しく進行する。

 

電気トリーと比べて,極めて低電界で発生する。

 

内導水トリー,外導水トリー,ボウタイトリーがある。

 

水トリーが発生するとtan δ や直流漏れ電流が増大するので劣化診断の有効な手掛かりとなる。

 

4.まとめ

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電力ケーブルの絶縁劣化の原因と診断技術ならびに,水トリーについて説明しました。

 

絶縁劣化の原因と電気的劣化,化学的劣化,温度による劣化,吸水による劣化,機械的劣化があげられる。

 

吸水による劣化は水トリーと呼ばれ,絶縁体中に侵入した水と異物やボイド,突起などに加わる局部的な高電圧との相乗作用により樹枝状に成長していく。

 

ケーブル診断技術には,ケーブルの導体・シース間に直流高電圧を印加し,漏れ電流,変位電流,吸収電流を測定して診断する直流高圧法,高電圧印加によりボイドやクラックなどで発生する部分放電の大きさ,回数および放電が発生し始める電圧から診断する部分放電測定法,商用周波交流電圧を印加し,誘電正接の温度特性,電圧特性などを測定して診断する誘電正接測定法,直流電圧を印加した時の漏れ電流から絶縁抵抗を測定する方法があげられる。

 

それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!

 

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