直流送電方式のメリットデメリットを解説[送電線10]

 直流送電方式のメリット,デメリットを交流送電方式と比べて説明する。

 

目次

  1. 直流送電のメリット
  2. 直流送電のデメリット
  3. まとめ

☆誰も知らない画期的な電験論説攻略方法☆

 

送電線で交流を整流(順変換)して直流とし,直流送電線で送電する。

 

受電側では直流を交流に戻して(逆変換),負荷に供給する。

 

交流変換機器として,従来は水銀整流器が用いられていたが,現在はサイリスタが使用されている。

 

変換装置を4組直列接続して4倍の直流電圧を得るものや,整流器を数個直列にする方式などがある。

 

通常,整流器の中間点を接地するが,線路方式には2線式,3線式,1線大地帰路式などが考えられている。

 

1.直流送電のメリット

  

(1)絶縁レベルを低くできる

 

電圧の最大値と実効値が同じであるから(交流に比べて,最大値は1/√2になる),最大値で決まる絶縁レベルを低くすることができる。

 

架空電線でも,もちろん,交流方式よりも絶縁レベルが低くできるが,ケーブルの場合には,絶縁物の特性上,その効果は顕著である。

 

このため,絶縁に要するコストを切り下げることができる。

 

(2)安定度の限界がなく長距離送電に適している。

 

交流送電では,安定度により送電電力と距離に制限がある。

 

一方,直流送電では距離に関係なく電流容量の限界まで送電容量を高められる。

 

また,線路充電容量の問題やフェランチ現象なども生じない。

 

したがって,長距離送電になればなるほど直流送電方式のメリットが大きくなる。

 

(3)送電損失が少ない

 

無効電流がないため,電圧変動率が良好で無効電流による損失の増加がない。

 

ケーブルでは誘導体損失は減少する。

 

(4)異周波系統間の連系ができる

 

送受両交流系統の周波数を単独に定めることができるので,どのような系統間に連系もでき,任意の方向に送電できる。

 

なお,2つの交流系統を直流系統で連系すれば,両交流系統の周波数をそれぞれ単独に制御できる。

 

(5)交流系統の短絡容量を減少させられる

 

連系系統間に直流送電を挿入することにより系統分離の効果が得られ,交流系統の短絡容量を軽減でき,遮断器の負担が軽くなる。

 

(6)系統制御を迅速に行える

 

交直変換装置は静止器であるため機械的な慣性がなく,潮流制御を迅速に行える。

 

(7)送電線の建設費が安価である

 

直流方式では導体が2本でよいことと絶縁レベルを低くできることから,支持物を小型にでき,送電線の建設費を抑制できる。

 

2.直流送電のデメリット

 

(1)交直変換装置が必要である

 

大電力用でかつ,信頼性の高い交直変換装置が必要であり,その分だけ設備費が割高となる。

 

(2)大容量の無効電力源を要する

 

無効電力の送受ができないので,受電側に負荷の無効電力を供給するための大容量無効電力源を要する。

 

(3)地中埋設物に電食を生じる

 

大地帰路方式を使用すると,近くの地下埋設パイプなどに電食が生じる。

 

(4)大容量直流遮断器が必要

 

直流では交流のように電圧,電流が零となる瞬間がないため,高電圧大電流の遮断が難しい。

 

(5)直流系統用の避雷器が必要

 

直流では交流のように電圧,電流が零となる瞬間がないため,続流遮断に交流より過酷な責務が要求される。

 

(6)がいしの汚損がはげしい

 

直流送電線のがいしは,静電誘導によるチリ,ホコリの付着が激しく,一旦付着すると容易には落ちないので,がいしの汚損が急速に進行する。

 

3.まとめ

☆誰も知らない画期的な電験論説攻略方法☆

 

交流送電方式と比べた直流送電方式のメリット,デメリットを説明しました。

 

直流送電方式のメリットとして,絶縁レベルを低くできる,安定度の限界がなく長距離送電に適している,送電損失が少ない,異周波系統間の連系ができる,交流系統の短絡容量を減少させられる,系統制御を迅速に行える,送電線の建設費が安価であるといった点があげられる。

 

一方,デメリットとしては,交直変換装置が必要である,大容量の無効電力源を要する,地中埋設物に電食を生じる,大容量直流遮断器が必要,直流系統用の避雷器が必要,がいしの汚損がはげしいといった点があげられる。

 

それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!

 

☆誰も知らない画期的な電験論説攻略方法☆