電力用コンデンサに設ける直列リアクトルの解説[変電所13]

 

電力用コンデンサを設ける場合,直列にリアクトルを接続する理由およびリアクトルの容量を決定する根拠を説明する。またリアクトルの容量の概略値を示す。

 

目次

  1. 直列リアクトルを接続する理由
  2. 直列リアクトルの容量および概略値
  3. まとめ

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1.直列リアクトルを接続する理由

 

変圧器や誘導電圧調整器などは,その磁気飽和のために励磁電流中に基本波の3,5,7倍などの周波数を含む高調波を生じて,これらに接続する送配電線には高調波が発生する。

 

しかし,一般に電路中の変圧器のいずれ側かが三角結線になっているので,第3調波はこれを環流して外部に現れない。

 

よって主として第5調波が送配電線に現れる。

 

この第5調波の影響を抑制するために直列リアクトルを接続する。

 

2.直列リアクトルの容量および概略値

 

以下の画像で高調波の影響を検討する。

 

 高調波回路では電源の内部インピーダンスはほとんどインダクタンスLのみになるとみなし,第5調波がコンデンサに加えられると,1/5ωC>5ωLの場合,電流Iは電源Eよりもπ/2(90°)進み,Lの電圧VL=5ωL✕I=I✕XLは,Iよりもπ/2進んでいる。

 

電源EよりVL=5ωL✕I=I✕XLを引いたものが,端子電圧Vになり,これはコンデンサの端子電圧Vcでもある。V=Vc=E−(−VL)となり,V>Eである。

 

すなわち第5調波電圧をコンデンサに加えると,その端子電圧Vcは拡大化されて基本波に加わることから,負荷端子電圧の波形を著しく歪ませる。

 

そこで以下の画像のように,コンデンサCと直列にリアクタンス5ωLsを挿入して,これを1/5ωCよりも大きくすると,第5調波に対して誘導性になり,電流I’はEよりもπ/2(90°)遅れて,電源部のLの電圧VL=5ωL✕I’=I'✕XLはI’よりもπ/2進み,EよりI’✕XLを引いたものが,端子電圧V’となり,前のVよりもはるかに小さくなる。V’=E−(VL)となり,V’<Eである。

 

ここで,第5調波に対して直列共振させる。

 

すなわち,5ωLs=1/5ωC とすると,V'=0となり,負荷端子電圧には第5調波を含まず,波形が改善される。

 

この第5調波に対して誘導性とするLsの値は,5ωLs>1/5ωCを満たすことである。

 

ωLs > 1/25ωC=0.04✕1/ωC

 

以上より,直列リアクタンスをコンデンサリアクタンスの4%以上にすると誘導性にすることが可能である。

 

実際には6%程度が採用されている。

 

その理由として,過電流時の飽和による直列リアクトルの減少,周波数の変化によるリアクタンスの変化,コンデンサの一部故障による容量の減少に対する裕度,投入時の突入阻止などによる。

 

この直列リアクタンスの容量であれば,第7調波に対する2.1%,第11調波に対する0.8%にも対応が可能である。

 

3.まとめ

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電力用コンデンサを設ける場合,直列にリアクトルを接続する理由について説明しました。

 

また,その直列リアクトルの容量を決定する考え方と直列リアクトルの容量の概略値を示しました。

 

変圧器や誘導電圧調整器などは,その磁気飽和のために励磁電流中に基本波の3,5,7倍などの周波数を含む高調波を生じて,主として第5調波が送配電線に発生する。

 

この第5調波の影響を抑制するために直列リアクトルを接続する。

 

この第5調波に対して誘導性とするLsの値は,5ωLs>1/5ωCを満たすことである。

 

ωLs > 1/25ωC=0.04✕1/ωC

 

以上より,直列リアクタンスをコンデンサリアクタンスの4%以上にすると誘導性にすることが可能である。実際には,過電流時の飽和による直列リアクトルの減少,周波数の変化によるリアクタンスの変化,コンデンサの一部故障による容量の減少に対する裕度,投入時の突入阻止などを考慮して,6%程度が採用されている。

 

それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!

 

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