変電所の母線保護継電方式の解説[変電所8]

 

変電所の母線保護継電方式には,差動方式,位相比較方式,方向比較方式および遮へい母線方式(事故母線方式)があるが,それぞれの原理について説明する。

 

目次

  1. 差動方式の種類と原理
  2. 位相比較方式の原理
  3. 方向比較方式の原理
  4. 遮へい母線方式の原理
  5. まとめ

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1.差動方式の種類と原理

 

差動方式は次のように大別できる。

 

電流差動方式:過電流方式,比率差動方式

 

電圧差動方式

 

電流差動方式の原理は以下の通り。

 

母線に接続されている全回路に変流器を設けて,その二次側で差動回路を構成する。

 

その差動回路に過電流リレーを挿入したもので,差動回路に流れる差電流は外部事故時は0,内部事故時には0とならないので,この差電流を過電流リレーが検出し内部故障と判定する。

 

外部事故時に,変流器特性の差により誤差電流が差動回路に流れ,誤動作を起こしやすい。

 

それを防止するために,過電流リレーの代わりに比率差動リレーを用いることが多い。

 

また,差動回路に高インピーダンスの電圧継電器を接続して過電圧を検出したときに内部事故と判定するのが電圧差動方式である。

 

2.位相比較方式の原理

 

差動方式が電気量の比較を行うのに対して,位相比較方式は母線から流出する電流の位相を比較して事故の内外部の判定を行う方式である。

 

各回路の変流器の二次電流を位相比較継電器で比較することになる。

 

各回路電流の正波と負波を整流して位相を比較するもので,各回路の電流位相が同そうであればリレーが動作し内部事故と判定する。

 

また,各回路の電流のうち,1回路でも逆位相の電流があればリレーは不動作となり外部事故と判定する。

 

したがって,電気量には無関係に保護できるため,整流器の飽和による誤差電流に対する対策として有効な方式である。

 

3.方向比較方式の原理

 

位相比較方式が電流位相を検出するのに対して,方向比較方式は電力方向継電器を使用し,系統電圧を基準として電流の方向を検出する方式である。

 

方向継電器には故障電流流入で動作する内部方向継電器と故障電流流出で動作する外部方向継電器の2種類が組み合わされて用いられる。

 

内部事故時は電圧と電流が同相となりリレーが動作する。

 

一方,外部事故時は電圧と電流が逆位相になりリレーは不動作となる。

 

したがって,位相比較と同様に電気量には無関係に保護を行うことができるが,短絡時の電圧降下による電力方向継電器の記録動作には留意する必要がある。

 

この方法として,差回路電圧を基準電圧として使用することもある。

 

4.遮へい母線方式の原理

 

ブスダクトまたはメタルクラッドなどの金属ケースの遮へい体で母線を包む。

 

そして遮へい体を1点で接地し,接地箇所に地絡過電流リレーを設置する。

 

遮へいされた部分での母線事故時,接地導体に流れる電流を過電流リレーによって検出する方式である。

 

3.まとめ

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変電所の母線保護継電方式として,差動方式,位相比較方式,方向比較方式および遮へい母線方式の原理について説明しました。

 

差動方式には,電流差動方式(過電流方式,比率差動方式),電圧差動方式があり,母線に接続されている全回路に変流器を設けて,その二次側で差動回路を構成する。その差動回路に過電流リレーを挿入したもので,差動回路に流れる差電流は外部事故時は0,内部事故時には0とならないので,この差電流を過電流リレーが検出し内部故障と判定できる。

 

外部事故時に,変流器特性の差により誤差電流が差動回路に流れ,誤動作を起こしやすいが,過電流リレーの代わりに比率差動リレーを用いることで回避できる。また,差動回路に高インピーダンスの電圧継電器を接続して過電圧の検出で内部事故と判定するのが電圧差動方式である。

 

位相比較方式は母線から流出する電流の位相を比較して事故の内外部判定を行う方式で,各回路の変流器の二次電流を位相比較継電器で比較することになる。

 

各回路電流の正波と負波を整流して位相を比較するもので,各回路の電流位相が同相であればリレーが動作し内部事故と判定する。

 

 

電気量には無関係に保護できるため,整流器の飽和による誤差電流に対する対策として有効である。

方向比較方式は電力方向継電器を使用し,系統電圧を基準として電流の方向を検出する方式である。方向継電器には故障電流流入で動作する内部方向継電器と故障電流流出で動作する外部方向継電器の2種類が組み合わされる。内部事故時は電圧と電流が同相となりリレーが動作するが,外部事故時は電圧と電流が逆位相になりリレーは不動作となる。

 

 

遮へい母線方式は,ブスダクトまたはメタルクラッドなどの金属ケースの遮へい体で母線を包む。

遮へい体を1点接地し,接地箇所に地絡過電流リレーを設置する。遮へいされた部分での母線事故時,接地導体に流れる電流を過電流リレーによって検出する方式である。

 

それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!

 

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