近年,電力系統において多くの高調波発生機器が使用されるようになり,この影響で電力系統の電圧波形にひずみを生じ,電気機器に対する障害が増加している。
高調波について以下の項目を説明します。
目次
- 高調波の発生源
- 高調波による障害
- 高調波対策(発生源側の対策,直列リアクトル付き力率改善コンデンサにおける障害防止対策,配電系統の対策)
- まとめ

1.高調波の発生源
(1)半導体のスイッチングを用いた機器(サイリスタまたはシリコン整流器),AD−DC変換装置,交流電力調整装置(抵抗炉の温度制御,誘導電動機の速度制御などのため点弧角制御を行うもの),サイクロコンバータ,インバータエアコン,テレビ
(2)アーク炉,圧延機,溶接機などの変動負荷
(3)変圧器,回転器などの鉄心の磁気飽和した励磁電流など(パワーエレクトロニクスを応用した電力変換装置)
2.高調波による障害
第3次高調波は変圧器のΔ巻線で吸収されるので,第5次高調波成分が広く顕在化する傾向がある。
以下に高調波による障害を説明する。
(1)コンデンサ,直列リアクトルの振動,うなり,過熱,焼損
(2)蛍光灯のチョークコイル・力率改善用コンデンサの過熱・焼損
(3)電子計算機,OA機器の停止,動作不安定
(4)各種制御装置の誤制御(コンピュータの演算ミス)
(5)ノーヒューズブレーカーの誤動作など(過大な電流による動作)
(6)回転機の振動,異常音,回転数変動,効率低下(第5次高調波は回転磁界を逆転させる)
(7)変圧器の騒音増加,効率低下
(8)AV機器の雑音,映像ひずみ,過熱などの悪影響
3.高調波対策
(1)発生源側の対策
・LC共振回路を組み合わせて,ある特定の次数の高調波を吸収する受動フィルタまたは正弦波とひずみ波の差分の電流を注入する能動フィルタを設置
(高調波と等しい大きさの高調波を逆方向に注入して系統の高調波を相殺する)
・半導体のスイッチングを利用した電力変換機器の多パルス化(相数を多くする)
(2)直列リアクトル付き力率改善コンデンサにおける障害防止対策
・軽負荷時の開放運用(軽負荷時に高調波障害が顕在化するため)
・受電用変圧器の低圧側への設置(需要家で発生した高調波を抑える効果が大きくなる)
・コンデンサの8〜13%容量の直列リアクトルの適用(過熱焼損防止)
・直列リアクトルの耐量の増大(インピーダンスを大きくして誘導性として過大電流の侵入を防止)
・高調波,過電流,温度などを検出する装置を設置して異常時に自動遮断する(高調波過電流継電器)
(3)配電系統の対策
・電源送電線あるいは配電線系統の切替(専用化),一部変圧器の停止などによる高調波共振状態のシフト
・線間電圧の不平衡の低減(不平衡になると整流器で第3調波が大きくなる恐れがある)
・短絡容量の増大(太線化してインピーダンスを小さくするなど)
4.まとめ
近年,高調波発生機器が多く使用されるようになり,電力系統の電圧波形にひずみを生じて影響が健在化している。
高調波の発生源とその影響ならびに対策について説明しました。
高調波により,コンデンサ,直列リアクトルの振動,うなり,過熱,焼損,蛍光灯のチョークコイル・力率改善用コンデンサの過熱・焼損,AV機器の雑音,映像ひずみ,過熱などの故障の恐れがあります。
また,電子計算機,OA機器の停止,動作不安定,各種制御装置の誤制御,ノーヒューズブレーカーの誤動作などの影響があります。
対策としては,発生源側における対策として,LC共振回路を組み合わせて,ある特定の次数の高調波を吸収する受動フィルタまたは正弦波とひずみ波の差分の電流を注入する能動フィルタの設置,半導体のスイッチングを利用した電力変換機器の多パルス化があげられます。
また,直列リアクトル付き力率改善コンデンサにおける障害防止対策として,軽負荷時の開放運用,受電用変圧器の低圧側への設置,コンデンサの8〜13%容量の直列リアクトルの適用,直列リアクトルの耐量の増大などがあげられます。
配電系統の対策として,電源送電線あるいは配電線系統の切替(専用化),一部変圧器の停止などによる高調波共振状態のシフト,線間電圧の不平衡の低減,短絡容量の増大があげられる。
それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!
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