アーク炉稼働時に発生するフリッカの代表的な防止対策を説明する。
※フリッカは,力率が急激に悪くなり,蛍光灯のチラツキなどが発生する現象です。
目次
- 電源系統側での対策
- フリッカ発生側での対策
- まとめ

1.電源系統側での対策
(1)系統変更
アーク炉負荷用の給電線や変圧器バンクを専用化し,一般負荷とは分離供給する。
あるいは供給電圧を一段上の電圧階級に変更したり,大きな火力発電所に近い場所から受電するなど,短絡容量の大きな地点から受電するようにする。
(2)直列コンデンサの採用
フリッカが問題となる地点より電源側に直列コンデンサを挿入し,電源側のリアクタンスを打ち消し,見かけの短絡容量を増大させる。
直列コンデンサの補償度を70〜80%に選ぶのが最も抑制効果が大きく,無対策時の半分にフリッカを抑制できる。
(3)ブースタなどによる方法
アーク炉への母線と一般負荷への母線との間にブースタまたは補償変圧器を挿入し,アーク炉による電圧変動分を極性反転して一般負荷母線に追加して,一般負荷母線への電圧動揺の影響を打ち消す。
抑制効果は非常に高く,電圧動揺が1/10程度に減少する。
2.フリッカ発生側での対策
(1)直列リアクトルによる方法
アーク炉用変圧器の一次側に直列リアクトルを挿入して,アーク電流の急増を抑制する方法をとる。
特に電圧,電流特性に飽和特性を持たせた可飽和リアクトルを用いるのが効果が高い。
可飽和リアクトルは同一鉄心に交流巻線と直流巻線を巻き,直流側の小電流を制御することにより鉄心中の磁束密度を変化させ,交流側のインピーダンスを大幅に変化させる。
定格電流におけるリアクタンスは小さく,過電流域でのリアクタンスが急増する非直線性をもたせたものである。
(2)並列飽和リアクトルによる方法
低電圧特性をもった飽和リアクトルを炉用変圧器一次側に並列に挿入し,アーク炉負荷の変動分を吸収させるもので,発生する奇数次高調波のフィルタ群を併用している。
静止形で応答が速く,フリッカもおよそ1/10に抑制される。
(3)同期調相機と緩衝リアクトルによる方法
電源と炉用変圧器の間に緩衝リアクトル(直列リアクトル)を挿入し,並列に同期調相機を接続する。
アーク炉負荷の無効電力変更分を同期調相機が即応して供給して,系統の無効電力の変動を抑えることで,フリッカを抑制する。
力率改善による損失減少,炉の操業効率が上がるなどの運転上の利点はあるが,同期調相機が価格が高いことと保守に手間がかかる欠点がある。
(4)静止型無効電力補償装置(SVC)で無効分を高速で補償する方法
コンデンサに直列にサイリスタを逆並列に接続したもので,サイリスタの超高速スイッチング特性を利用して,アーク炉負荷変動量に応じた適正量のコンデンサを負荷に並列に投入あるいは開放することによって,アーク炉に生じる無効電力の変動を吸収し,系統側の無効電力変動量を減少させるものである。
オンオフ制御であることから,同期調相機のように連続的な制御ができない欠点がある。
また,進相コンデンサと並列リアクトルを同容量設置しておき,逆並列接続されたサイリスタによって,通電位相角を制御し,並列リアクトルの容量を負荷変動に対応させて,高速かつ連続的に調整し,負荷の無効電力変動を補償する方法もある。
3.まとめ
アーク炉稼働時に発生するフリッカの代表的な防止対策を説明しました。
電力系統側の対策として,系統構成を変更して供給線としたり,供給線の電圧階級を格上げしたり,変圧器バンクを専用化する方法がありました。
また,直列コンデンサやブースターを採用して,アーク炉の電圧変動分の影響を緩和する方法もありました。
一方,フリッカ発生側での対策として,直列リアクトル,並列飽和リアクトル,同期調相機と緩衝リアクトルを採用して,アーク炉負荷による無効電力の変動分を吸収(供給)する方法がありました。
さらに,サイリスタの高速スイッチングを利用した静止形無効電力補償装置(SVC)を用いて,無効分を高速で補償する方法もありました。
それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!
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